2024/01/24 16:05


レザークラフトをしていてベルトの剣先やコーナー部分のRカットがきれいに決まらなくて困った方も多いと思います。きれいに切れて応用も効くクォーターラウンドパンチをお勧めします。少しコツがいるので特徴や使い方について解説させていただきます。



きっかけ

本題に入る前にクォーターラウンドパンチを使うようになったきっかけを少しお話します。

よく似たものは沢山あります。店長もかつてベルトに使おうとアマゾンで購入したものをいくつか所有しています。


これらの口コミには多くの方が切れが悪いと書いていましたが、私は切れ味に不満はありませんでした。そもそもこういった工具は上から叩いたりプレスしたりする前提でつくられているので革包丁のような切れ味鋭いものではありません。



それよりも自分が気になったのは先端のR部分から直線に切り替わる辺りの歪みです。左右で曲がり具合が違っていることと、直線部分が平行になっていないことで使いにくいのです。手で曲げて直そうにも微妙な角度調整は難しく、力を入れすぎると剣先の形が歪んでしまいそうです。




原因として考えられるのはそもそもの加工精度が低いことと、素材が薄いことです。鋼の厚みはおよそ0.7mm、指先で軽くつまんでも変形します。
そういった訳で他の商品を探し始めました。


スウェーデン鋼

もともとこういった類の工具はスウェーデン鋼と呼ばれて以前からありました。本来はスエーデンで産出される良質な刃物鋼がスウェーデン鋼です(鳥根県の安来鋼のような感じでしょうか)。あらかじめスウェーデン鋼(刃付鋼)の刃が付いたテープ状の鋼材を曲げて作られた抜き型などをスウェーデン鋼と呼ぶようになったと聞きました。

革問屋の多い浅草あたりにある抜型屋さんに手書きの図面を持ち込むとその場で曲げて作ってくれました。20年も前の話で今はどうか分かりませんが私もいくつか作ってもらったスウェーデン鋼の抜型を持っています。


握って上から叩けるようにロウ付けされたコーナーパンチは1つ4~5千円だったように記憶してます。剣先用もいくつか作っていただきました。現在は同じような形の既製品が多くあるのでそれらで代用できると思いますが色々揃えるとなると懐が痛みます。
そこでクォーターラウンドパンチの出番な訳です。やっと本題に入ります。


特徴と使い所

手ごろな価格で複数サイズ揃えるためにはハンドルは不要と考えました。そして半円ではなく1/4サイズの方が小さくて安価、応用も効くのと思います。コーナー部分に使う場合は基本1/4サイズです。剣先に使う場合も1/4サイズをセンターから左右に振って使います。先端の膨らんだ形状の剣先も2種類のRを使う事で再現できます。ハンドルが無くても叩けますし、ハンドル付きをいくつも揃えると場所を取りますがクォーターラウンドパンチならスッキリ小さく収納できます。


パスケースなどの取り出し口の加工にはR40などがピッタリです。厚みも1.1mmで剛性は十分、抜型にしてはよく切れる刃が付いています。画像のクオーターラウンドパンチは店長の私物で分かりやすいようにサイズを記入してあります。商品にはサイズ表記はありませんのでご自身でR定規に照らし合わせるか、もしくは小さいほうからR5,R8,R10,R12,R15,R20,R25,R30,R35,R40となっておりますので必要な方は記入ください。


使い方

ベルトの剣先加工を例に使い方を解説します。剣先の場合、頂点の位置が正確にベルト幅のセンターにあることと、直線に切り替わる部分が左右で同じ位置に来るように加工する必要があります。


頂点の位置と直線に切り替わる位置に合印を入れます。ベルトの幅は剣先加工後に切り出す方が上手く加工できます。すでにベルト幅に加工された革に使う場合は同じ厚さの革をクォーターラウンドパンチの両端に敷いてください。



刃先が鋭いので銀面を傷つけないようそっと乗せます。位置が決まったら軽く指で押して刃先を銀面に食い込ませます。



パンチの両端を持って押さえになるものを乗せます。板状の硬く滑りにくいものが適しています。



空いている手で打ち棒などを使い軽く数回叩きますが、完全に切断せずに反対側の加工に入ります。(完全に切断してしまうと頂点部分の合印が分からなくなりやすいので後から切断します。



反対側は完全に切れるまで叩きます。思いっ切り叩く必要はありません。パンチの歪みの原因にもなります。よく切れる刃が付いているので軽く複数回に分けて叩きます。



初めの方の切り溝に再びパンチを入れて下まで叩くとご覧のように切れます。使用した革はヌメの2.3mm厚ですがきれいに切れています。



直線部分を定規で切り落として完成です。

合印が正確であれば割とラフに合わせても良い形に抜けます。ポイントはパンチの両端にも革があることです。中央付近のみで両端に革が無いとグラついて安定しません。ぜひ試してみてください。

クォーターラウンドパンチの詳しい情報は下のリンクからお願いします。